今回の辞任劇は馬鹿らしくて本当はコメントする気力もない。でもやはり論点は整理しておくべきだろう。先ず越智委員長の発言の一番目の理由は元大蔵官僚の体質・驕りから来る習性のようなものであり、二番目は地元業界に利益を還元するという日本的政治家体質によるものであろう。二番目の理由の説明は最も簡単で「私の所に来たら最大限考慮する」から一票の方をお願いという事に他ならない。寧ろ今回糾弾すべきは一番目の理由の方である。
越智氏は元大蔵省主計局調査課長の肩書きを持つ、元官僚・キャリアである。以前接待汚職が表面化した時の事でも判るように、検査担当のノンキャリアが逮捕されても、接待王と言われた元証券局長は逮捕されなかった。しかし報道されていて恐らく真実であろう接待額は、我々一般人の常識をはるかに越えるものであった。大蔵省の検査（今は金融監督庁へ移行）と日銀の考査は金融機関の健全性を保ち、預金者・投資家等の利益を守ることが本来の目的であろうが、現実には高級官僚のたかりの材料とされて来たのは紛れもない事実である。恐らく越智氏も官僚当時の習性が今も残っていて、現実に検査に手心を加えることが出来る・出来ないに関わりなく、たかりの材料にしようと考えたのであろう。
長銀や日債銀の不良債権隠しを見抜けなくとも何ら責任を取ることの無かった検査・考査。山一證券の飛ばしを検査で指摘するどころか、実は海外への飛ばしを指導していながら全く責任を問われなかったＭ証券局長の事件。検査で問題を見抜けないからと責任追求されるのではなく、手心を加えるから天下りを受け入れろと圧力を掛ける、それが過去の検査の実態であった。
今一度、検査・考査といったものが我々納税者・主権者・預金者・投資家にとってどういう意味を持つものか考え直してみるべきではないだろか。金融機関が検査官に本社最上階の特等室を提供し、何も発見出来ないのでは彼らの得点にならないからと、お土産不祥事を用意しておく検査・考査など、官僚にとっては接待や天下り要請の材料となる意味を持っても、我々国民にとっては何の利益ももたらさないのである。検査・考査で本当の問題を発見出来なかった検査官・考査官の責任を追求出来るよう、オンブツマン制度などの整備を早急に行ない、検査・考査を官僚のたかりの材料から、国民にとって真に役に立つ物へと変換すべき時が来ている。そうした必要性を再認識させた反面教師として、今回の越智委員長辞任事件を捉えたい。
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