英会話学校最大手のNovaは10月26日に会社更生法を申請し倒産した。猿橋望社長はかなり前から雲隠れ状態であったらしく、この日に解任され受講生・従業員・講師に対する説明責任を果たしていない。Novaはいつでも予約が出来ますと言いながら、現実には予約する事が出来ないなど多くの問題があった事は事実のようだが、こと今回の倒産そのものについては経済産業省が潰したと言うべきものだ。多くの外人講師を抱えている現実から日本の国際的信用低下を招くという事実を理解しない経済産業省の失策である。
私が以前いた会社が倒産して丁度10年目の日を迎え様としていた時の大型倒産だけに、今回のNovaの会社更生法申請はある意味感慨が深い。今後保全管理人が何をして再建を試み様とするのかもかなり予想で出来る。しかし私がいた金融機関の倒産の時とはかなり異なるものがある事も事実だ。例えば私の時のケースは倒産後も給与は支払われていた。一方のNovaは8月頃から遅配が報道され始め、9月、10月と振込み日が過ぎても未だに支払われていないらしい。当然外人講師の反発は強く、レッスンのボイコットなどに及んで既に幾つかの教室は9月頃から休校に追い込まれていた。従業員にしても給与が支払われていなければ生活が出来ないという事で、かなりの人数で辞めていたらしい。
こうした現実は社長ほか経営陣の経営能力に問題があった事は事実である。しかし他社と比較すれば安いとされて来た同社の経営は言わば薄利多売であり、多くの受講生が集まる事が基本的に必要だった訳だ。しかし経済産業省が行なった行政処分で教育訓練給付金の対象指定から外され、新規受講生の激減を招いた。当然資金繰りは悪化した。問題は英会話学校を倒産に導くような行政処分を行なったという事実だ。つまりこの行政処分に対しては相当な能力のある経営者でなければ倒産回避が出来なかったのではと考えられる。天下りを受け入れている金融機関ならなんとか倒産回避しようとしても、そうではない企業は潰せば良いと考える官僚の思うままだったと言うべきである。
そもそも今回の発端はスムーズに予約が出来ない元生徒が起こした訴訟がトリガになっている。元生徒は600ポイントを単価1200円で購入したが、400ポイント弱利用した所で解約した。これに対しNovaは400ポイントを一括購入した時の単価である1700円で利用したものとみなし、残りを返済しようとしたところ原告に訴えられたという話で、結局Novaは最高裁まで争って負けた。一見顧客サイドに立った良い判決のように思うが、良く考えると経済原理上納得し難いところがある。つまりこれを認めてしまうと誰でも安い単価のまとめ買いを行ない、中途で解約する事で少ないまとめ買いをした時よりも安くなってしまうのである。下に400ポイントを買う場合のケースを具体的に書いてみる。
(1) 400ポイントを1700円で買う。 1700円 x 400 = 680,000円
(2) 600ポイント買っておいて400ポイト使った時点で解約する。
1200 x 600 - 1200 x 200 = 480,000円
(2) のケースでは当然手数料も取られるだろうが、(1) のケースより安くなるのは当然で、そもそもまとめ買いするから単価が安くなるという意味がなくなってしまう。低金利下では誰でも(2)を選ぶはずであり、これでは沢山ポイトン購入するから割引率が大きくなりますという意味がそもそも無くなってしまう。この判決にはかなりの疑問があり、その事は以前にも書いた。
さて保全管理人は1か月が勝負という事で、支援企業の選定に入った。この辺の言い分は私が居た金融機関の倒産の時と全く同じである。しかし既に従業員・講師に支払う現金が無かったという現実と、439億円という負債額の大きさ及び受講生・教室の多さから考えると、支援企業が現れ再建される可能性は極めて低いと考える。既に受講料を前払いしている受講生は泣くか諦めるしかないが、個人的に問題と考えるのは外国人講師の生活であり、日本の国際的信用に関わる。
Novaに限らず外国人講師は雇用保険や健康保険等で冷遇されて来た事実がある。確かに、ワーキングホリデー等で短期の滞日講師が多い事も事実であろうが、彼らは日本の文化を知って祖国に帰る健全な労働者で、最近良く問題になる不法滞在労働者とは本質的に違う。日本の良い所を知ってもらい、それを祖国に伝えてもらえる民間大使のような彼らを経済産業省の失策で失業させ、日本に対し悪印象を擁かせて帰してしまって良いのか？ 良いはずは当然なく、経済産業省の問題を越えて政府の外交失策になると考える。そうならないように、必要な施策を行なうべきだ。
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