先日解放された３人に続いて、行方不明になっていた２人も無事解放された。しかしそれで物事が解決した訳ではない。今回の人質事件で判ったことは、多くのイラク人は同国内に軍隊を派遣している国を米英の同盟国とみなし、占領に加担していると思っていることだ。３人が拉致された時の要求は自衛隊の撤退であり、２人が解放された際の声明も自衛隊にイラク国内から去って欲しいというものだ。イラク国民の多くに不快に思われてまで自衛隊を派遣する必要が一体どこにあったのだろう。単に米国に追随し、ブッシュ大統領に多少の恩を売っているだけである。
私はまだイラクに大量破壊兵器が有ると信じられていた当時に「それでもイラク攻撃は避けよ」と書いた。そこにはへたをすればベトナム戦争の二の舞と書いたが今まさにそうした状況になっている。日本も国際テロのターゲットとなると書いたが、今回の人質事件はその始まりである。大量破壊兵器が無かった事が濃厚な今となっては、「国際法違反ではないのか？」ではなく、ブッシュとブレアは国際法廷で裁くべき戦争犯罪人と考えられる。そしてその米英を支持し、今年になって自衛隊を派遣した小泉首相も同じ穴の狢である。
解放後の３人に対して、政府周辺では自己責任を問う意見が強く出ているようだ。退避勧告を無視してイラク入りしたと言うことらしいが本末転倒である。彼らが人質とされすぐ解放されなかったのは、日本が自衛隊を派遣したからだ。これはドイツやロシアなど非派遣国の人質がすぐ解放されている事実を見れば明々白々である。原因を作った方に非難する権利があるとは思えない。民主党の菅代表がイラクの治安状況悪化を理由に自衛隊の撤退または縮小を求めているが、賢明な意見である。人質を取っても自衛隊が撤退しないと武装勢力が考えた時、次にすべき事は自ずと決まって来る。自衛隊自身がテロのターゲットにされる前に、早々に撤退するのが良い選択肢である。
今回の人質解放にあたっては現地の聖職者協会が大きな影響力を持ち、解放の仲介を行なっていた。その代表格アルクベイシ師は自衛隊に対する不満を表明している。憲法に反する行動をとったからだと言う。クバイシ師は川口大臣の声明には感謝の気持ちが感じられなかった、人質の解放を望んでいないように聞こえたという。日本政府は自衛隊派遣を人道支援、イラクの為と言っているが、現地の方々の認識とは大きなギャップがある事が図らずも今回の事件で露呈した。スペインが撤退を始め、ホンジラスなども追随しようとしている。テロで犠牲者が出る前に自衛隊は撤退させるべきである。
前ページに戻る---> RETURN